篆刻を何も知らない人からの意見が心にグッサリ刺さることがある件
どもども、篆刻家雨人です
今は、立川伊勢丹の催事真っ最中
この文章を仕事終わりの喫茶店で書いています
いやあ、喫茶店でiPadをぽちぽち(笑)
けっこう憧れていたんですね
なんか、仕事できる人ですって感じ。
今、はやりのノマドワーカーですね
ブログ書いているだけなんだけど。。。
他業種から得られる新しい価値観
僕が今、篆刻を彫る際に参考にするのは
篆刻家の作品ではありません
現代アートだったり、陶芸家、建築家といった
他業種の作品
なぜかというと、同業の篆刻家の作品を真似すれば
それはパクリ(笑)
だけど、異業種のアイデアをこっそりいただくと
それはインスパイア
篆刻だけやっていては思いもよらないようなアイデアや
考え方が、他業種には満載なのです
お客さんが僕に気づかせてくれること
実演販売などで、篆刻に馴染みのない人たちの印を彫っていると
いろんな注文を受けます
僕は篆刻家なので、篆刻のセオリーで印を彫りますが
篆刻に馴染みのない人たちにとっては
そんなことはどうでもよく、
篆刻の常識ではありえない注文をして来たりします。
僕が彫り上げた印を見て、
ここ太くして
この線を突き抜けさせて
この線を短くして、うんぬんかんぬん。。。
一応、セオリーを説明しますが
大方、依頼者の意向を汲んで印を彫ります
心のなかでは、
これはきっとひどい印になるぞ。。。
とやきもきしながら彫ったりしますが、
意外や意外、
自分では想定もしなかったおもしろい印ができあがったりします
そんな時は悔しさ反面
これは使えると、目から鱗の体験をしたりします
ひとつの業界にどっぷり浸かってしまうと
一般の感覚と大きくずれてしまう時があります
そのずれには、外からの刺激がなければ気づきません
下手をすれば、一般的な感覚の感想を聞いたとき
分かってねえな、
と、見下すようになります
かつては自分も感じていた違和感、疑問も
「慣れ」という予定調和の中で
いつのまにかそれが当たり前になって行き、
以前感じていた違和感をすっかり忘れてしまうのです
僕はそれを実演販売で嫌という程実感しました
実演販売を始める前
僕は工房にこもり篆刻家としか交流をせず、
すっかり篆刻界の住人となっていました
それが悪いことだとは思いません
篆刻の世界にどっぷり浸かり
その中での新たな発見をし、仲間と共有する
そうやって篆刻は進化していくのです
一般的な感覚とずれていく自分に、全く気づかない
実演販売を始めた時、僕は印を全て篆書体で彫っていました。
それは、僕にとって全く当たり前で、疑問を挟む余地のない思考でした
篆刻は、篆書体で彫るもの
しかもそれがかっこいい
実演販売で印を彫り上げてお客さんに渡すと
怪訝な顔をされることが多々ありました
ま、理解できないのも無理ないかなあ
ぐらいに考えていましたが
ある日、印を持ち帰ったおばあさんが
改めて売り場までやって来て
おずおずと印を差し出し
これ、彫り直して欲しいんだけど。。。
よくできた印でした
何が不満なのかさっぱり分からず
理由を聞くと
わたしは、名前を書くのが下手で
手紙の最後に、このはんこを押そうと思ったんだけど
この書体じゃ、なんて書いてあるか分からないから。。。
本当に驚きました
篆刻は篆書を勉強していないと読めません
しかも篆書体は、篆刻家以外はほぼ読める人がいない文字
印に可読性を求めている人がいる。。。
それから考え方を180度改めました
印は、使う人間によって使う用途が違うということ
そんな事さえ気づいていなかったのです
それから、実演販売では篆書体で彫っていた文字を
読めるような書体に変更しました
しかし、篆刻家でありますから
篆書体と現代の文字を掛け合わせて、
今彫っているような書体の文字を作り上げて行きました
お客さんの反応がみるみる変わります
もちろん、書家など書道をやっている人には
ガッツリした篆書で
手紙やカジュアルに使いたい人には
可愛らしい可読性のある文字で
篆刻を彫る時は
かなりの確率で、縁に欠けを入れます
古味を付けるためですが
これにも抵抗感を示す人が多々いました
そこもいろいろ考慮しました
全くツルツルピカピカの印では面白みがない
お客さんの満足だけを追求するだけでは
僕が面白くないので
僕も面白く、お客さんも面白い
そんな感じで、どんどんスタイルは変化して行きました
自分のスタイルは既存の言葉では表現できない
色んな批判を受けて来たことも事実です
それが全く気にならなかったかというと嘘になりますが
これが僕の篆刻スタイルであり
僕が、この世に存在している意義でもあると思っています
なぜなら、僕が印を彫ることによって
喜んでくれる人がたくさんいるから
全てを、依頼者のいいなりになるのではなく
かといって、自分を押し付けることなく
自分が気持ちよく彫るものが
貰い手も気持ちがいい
そこが僕のいる世界です
時々思うのは、僕は篆刻家、という種類の人間ではないのかもしれないということ
僕がやっていることは、篆刻とは全く違う何かなのかもしれない。
もし、ぴったりする名称があれば
それを名乗りたいなあ、
と思っていますが
今のところいいアイデアは浮かんでいません
今日も僕は印を彫るのだ
そんなこんなで、ただ今立川伊勢丹店で実演販売真っ最中
となりの売り場には
焼きごてで木に絵を描く作家さんが
作品を並べています
今回も色んなアイデアを頂いちゃいました
いや、これは面白いよ
木は彫るもんだとばっかり思っていましたからね
焼きごてで絵を描く。
知り合いにもいますが、僕には遠い世界の仕事だと思っっていました。
が、実際、作品を作る現場を見ると
感じるものが数倍大きくなりますね
焼きごて買おっと
というわけで、雨人さんは1/22まで立川伊勢丹の6階ではんこ彫ってますよっ!
様子はこちら
遊びにてねっ!
今年の催事情報
今年も色々なところに出張実演販売を行います
お近くにお寄りの際は是非遊びに来てくださいね!
【記事を書いた人】
篆刻家、加藤雨人(うじん)
1975年生まれ
北鎌倉の篆刻工房「かまくら篆助」にて毎日篆刻を彫って暮らしています
詳しいプロフィールはこちら
篆刻家/役者/ラジオパーソナリティ/
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