「慌てず、騒がず、絆創膏」 ~タナカヨウコの篆刻探訪記 #039~
タナカヨウコの篆刻探訪記
「慌てず、騒がず、絆創膏」
●怪我はしないに越したことはない
刃物などの道具で指を切る、その対処法、と聞いて真っ先に頭に浮かぶのは、
DIYアドバイザー資格の実技試験だ。
DIYアドバイザーには知識と技術以上に、安全に対する意識の高さが求められる。
だから、実技試験で血を見せてしまったら一巻の終わり、一発アウトと、
受験者たちの間で、まことしやかに囁かれていた。
※もう15年ほど昔のハナシなので、現在どうなのかはわかりませんので悪しからず。
受験の前に、有資格者である会社の先輩から、手解きを受ける機会があった。
彼は、試験中に電動工具で指を切ったにも拘らず、合格を勝ち得たツワモノだった。
開始早々、左手人差し指の第一関節あたりに怪我を負ってしまった彼は、
慌てず騒がず涼しい表情で、強くこぶしを握り止血に努めたという。
人差し指を鍵状に保ったままの不自然な左手で、飄々とお題をやってのけたのだ。
試験会場では、複数の受験者分の机が間隔を開けて横一列に並び、
パーテーションで仕切られている。
2名の試験官が室内を移動しながら、その手順や道具の使い方を評価する。
受験者の方が多いため、試験管の目が離れている時間がどうしても発生する。
そこにつけ入るトリック(笑)
怪我をしてしまった丁度その瞬間を、運良く試験官に捉えられていなければ、
気づかれぬよう続きをうまく演じ切ることで、誤魔化せるかもしれないという。
慌ててしまえば、工程や道具を誤ったり、ミスを誘発するかもしれない。
騒いだりしたら(「ぎゃー」とか「痛っ」とか)、怪我がバレてしまうだろう。
気合で止血して、試験会場を退出したあとにでも、絆創膏を貼りましょう。
私はその先輩社員を見習い、もしもの時は無傷の自分を演じ切る心構えで試験に臨み、
怪我することもなく(それが当たり前)、真っ当に合格した・・・という蛇足。
●予防策は絆創膏とバイス
刃物を使う篆刻は、いつでも怪我のリスクと背中合わせにある。
百戦錬磨の雨人さんでさえ「結構指を切っちゃう」と言っている。
そんな怪我への対処法が、「慌てず、騒がず、絆創膏」と、
意外にシンプルで原始的、そしてごもっともなご意見であった。
万能な絆創膏が、怪我の回避と予防にも使えるとは、なるほど納得できる。
そして私は、
もうひとつの回避法、予防策、として出てきた道具にそそられてしまった。
その名も「篆刻バイス」・・・そんなものが世の中にあるんだ!!!
元DIYアドバイザーなので(?)
「バイス」という単語に懐かしさを覚え、無条件に反応してしまうのだ。
組手などの加工で細かくノコギリを入れるとき、私の場合、
バイスで固定しなかったらそれこそ、流血沙汰になるだろう。
篆刻の場合も同じなんだと、少し親しみを感じたりして(笑)
雑貨屋コンロラン店主 タナカヨウコ
【記事を書いた人】
ライター:タナカヨウコ
北鎌倉「コンロラン」店主
旅行好きがこうじて北鎌倉に世界の雑貨を扱う雑貨屋オープン
ライター、イラスト、写真と何でもこなすマルチアーティスト
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