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【人間力】 ~タナカヨウコの篆刻探訪記 #069~

 
 
 

 

 
【人間力】
 
●魅力あるモノ
ヨーロッパ買い付け旅で必ず買ってくるもののひとつに、
ヴィンテージの刺繍クロスがある。
 
国によって、地域によって、時代背景によって、流行り廃りによって、
或いは縫い子さんのセンスによって、施される刺繍は千差万別だ。
 
唯一無二のクロスとの出会いは、偶然なのか必然なのかわからないけれど、
その時、その場所でしか出会えない、正に一期一会なのだから、
感度のアンテナをビンビンに張って買い付けに挑む。
 
よく訪れるバルト三国は北方に位置する寒い国々なので、
冬の農閑期に女性たちは、手織り、手編み、手刺繍などの手仕事に勤しむ。
 
その技術は親から子へ子から孫へと受け継がれ、
とてつもない時間と惜しみない手間をかけた1枚が紡がれる。
 
リネンの産地でもあることから、良質な手撚り手織りのリネン生地が使われており、
縁のレースまで手編みだったりすると、その制作時間と労働力を想像して気が遠くなる。
 
裏返して糸目を見れば、表と見紛うほどの美しさ、その技術の高さに感嘆することも多い。
 
そんな刺繍クロスを、蚤の市やアンティークショップで血眼になって探し、
みつけた中から「これぞ!」と思える数枚を厳選していくのだが、
時折、お世辞にも上手いとか美しいとか言えないものに出会うことがある。
 
生地を広げ、ささっと両面をチェックし少し考えて、一旦畳んで棚に戻す。
だけどやっぱり感度アンテナが反応して、再度手に取りまた広げてもう一度見る。
そんなことを繰り返した挙句、結局買ってしまうその理由は、「そこに、魅力がある」から。
 
そして、その一枚にひと針に、隠された物語を妄想する。
老いて目が悪くなり、指先の動きも鈍くなった手刺繍のリネンブラウス姿のお婆さんが、
生まれくるひ孫のため、陽だまりの椅子に腰かけて、ゆっくりゆっくり針を運ぶ。
 
そんな情景が頭に浮かぶと、決して美しいわけではない味のある刺繍が、一気に愛おしさを増す。
そんなクロスは、お客様の手に取られる割合も高く、わりと早くに嫁ぎ先が見つかったりする。
やはり、「そこに魅力がある」のだろう。
 
 
●魅力あるヒト
心揺さぶる魅力あるモノを、人は自然と選んでしまう。
そこにあるのはテクニックだけでなく、作り手自身の魅力であり、人間力なのだ。
 
「魅力的な篆刻を彫る最大の秘訣は、人間力を磨くこと」
これは、篆刻以外のあらゆる場面で言えることかもしれない。
 
陶芸も然り、料理も然り、絵も然り、作り手の魅力が作品(出来上がり)に反映される。
 
芸術や創作ではないけれど、店作りにおいても同じことが言えるのではないだろうか。
魅力的な人間が選んだ魅力的な品々が並ぶ魅力的な店。
 
コロナ禍で散々な目に遭い、もうこれ以上為す術などないと諦めかけていたけれど、
先ずは今一度、自分の人間力を見直して磨くことから、リスタートしてみようか。
 
雑貨屋コンロラン店主 タナカヨウコ
 

タナカヨウコの篆刻探訪記
 【記事を書いた人】


ライター:タナカヨウコ
北鎌倉「コンロラン」店主
旅行好きがこうじて北鎌倉に世界の雑貨を扱う雑貨屋オープン
ライター、イラスト、写真と何でもこなすマルチアーティスト
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