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【小さな文字と大人の眼鏡】 ~タナカヨウコの篆刻探訪記 #070~

 

 

【小さな文字と大人の眼鏡】 
●平静な心
この日のキャンバスはたった6ミリ角の小さな石、そこに、三文字を彫るという。
 
単純計算で一文字当たりの面積は12平方ミリメートル程度、
余白を考えると、大きさとしてはざっくり、3ミリ角ほどのサイズになる。
 
「意自如(いじしょ)」・・・心が平静なさま。
 
確かに、平静な心を持ち合わせていなければ、こんなに繊細な作業なできないだろう。
 
 
●意自如に老いを受容する
私はド近眼で、日常ではコンタクトレンズの装着なしには生きられないと思えるほど、
視力矯正用品に依存して暮らしている。
 
ある時期、主に雨や曇りの日に、パソコンや新聞の文字を見辛く感じ、
意を決して、眼鏡屋さんに出向いた。
そう、(この時はまだ)ちょっぴり屈辱的にも思えた大人の眼鏡を作るために。
 
結論から言うと、
まだ老眼と言えるほどではないから、老眼鏡を作る必要はない、とのことだった。
もし仕事に差し支えるのであれば、100均で一番度の弱いものを買えば間に合うと。
 
全く見えないわけじゃなく、あくまで見辛い程度のことだったので、言われる通りにした。
 
後に、今度は近視用コンタクトレンズの度が合わなくなってきて、遠くが見にくくなってきた。
 
コンタクトレンズ買い替えの際、少しだけ度を上げてみると、一気に手元が見えなくなった。
ここのところは、レジで小さな値札がよく見えず、
「コンタクトの度を上げたら手元が見え辛くなっちゃって」なんて、
聞かれてもいない言い訳をしながら、100均で買った老眼鏡をかけるのが常だ。
 
小さな文字を書くことが得意だった私が、書いた時には眼鏡ナシでも当たり前に書けた値札の、
その小さな文字が読めないなんて、
ちょっと悲しい気もするし、なんだか切ない感じもする。
 
とはいえ、これが老いというものなのだと割と素直に受け止めている私は、
これから自分に起こるであろうさまざまな変化を、楽しみながら観察しようと思っている。
 
意自如、この言葉の通り、心平静に老いを受容しようではないか。
 
 
●一方的な心配
文字の大小にかかわらず、いつもの彫り語り同様にお喋りをしながら、雨人さんの彫りは進む。
 
流石に30秒というわけにはいかないけれど、その印刀に運びに迷いはなく、
流れるようなお喋りに耳を傾けていたら、あっという間に「意自如」印が彫り上がっていた。
 
ひらがなと違って、画数も多いのに凄いなぁ、あっぱれである。
あっぱれなんだけど、これで老眼になったら大変そうと、他人事ながら心配になった。
 
雑貨屋コンロラン店主 タナカヨウコ
 

タナカヨウコの篆刻探訪記
 【記事を書いた人】


ライター:タナカヨウコ
北鎌倉「コンロラン」店主
旅行好きがこうじて北鎌倉に世界の雑貨を扱う雑貨屋オープン
ライター、イラスト、写真と何でもこなすマルチアーティスト
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