「私の代わりに泣いてくれ!」 ~タナカヨウコの篆刻探訪記 #019~
タナカヨウコの篆刻探訪記
「私の代わりに泣いてくれ!」
●ウグイスの歌声。
ホーホケキョ。
春を告げるウグイスのさえずりが、
こんなにも美しく耳に、心に響くことは、今までになかった。
オオルリ、コマドリと並び、日本三鳴鳥に数えられるだけあって、
その歌声はとても綺麗で軽やかだ。
新型コロナウイルス感染症拡大により、
今年の春は様々な自粛と変容を余儀なくされた。
外出自粛要請や緊急事態宣言発出で、
もともと騒々しいわけでもない北鎌倉も、更に静けさを増した。
車の騒音が激減、観光客の話し声や笑い声が絶え、
ウグイスのさえずりが際立って、私の五感を刺激した。
よく通る高い声に耳を傾けながら、一抹の寂しさを覚えた。
●悩める北鎌倉。
北鎌倉の様々な施設も多分に漏れず、長期休業や縮小営業に突入した。
そんな状況を知ってか知らずか、
ウグイスは毎日その声に磨きをかけ、美しく歌い続けるのだった。
ご近所の浄智寺さんは、時間短縮と拝観制限で対応されていた。
寺が、人々の集まるきっかけを作ってはいけない。
しかしながら、未知のウイルスの脅威と日々の辛抱と努力に、
心がすり減っていく人間にとって、
心の拠りどころとなるべく場所もまた寺、なのだ。
感染拡大防止策を考慮しながら、試行錯誤の毎日だったのではないだろうか。
●静かな紫陽花の町。
緊急事態宣言が解かれ、6月1日より浄智寺さんも、
通常に近い形で開門されることとなった。
だからと言って、すぐに日常が戻るわけではなく、ましてや、
それを望むことも憚られる空気が観光地を支配する。
紫陽花の6月とは思えぬ、静かな北鎌倉に、ウグイスの鳴き声が響く。
それは、私たちの泣き声の代わる歌なのかもしれない。
いつもより早い朝の浄智寺さんで、どこからともなく聴こえる泣き声に、
一刻も早い収束と平穏を願って止まない。
※この記事を書いたのは6月3日です。随時、状況は変わると思われます。
お寺さんの開門・規制、北鎌倉の混雑状況については、各々の判断で最新情報をご確認願います。
雑貨屋コンロラン店主 タナカヨウコ
【記事を書いた人】
ライター:タナカヨウコ
北鎌倉「コンロラン」店主
旅行好きがこうじて北鎌倉に世界の雑貨を扱う雑貨屋オープン
ライター、イラスト、写真と何でもこなすマルチアーティスト
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