「職人になれそうもない」 ~タナカヨウコの篆刻探訪記 #036~
「職人になれそうもない」 タナカヨウコの篆刻探訪記
●職人と憧れ
「職人」って響きに憧れる。
何職人に、というより、
「手に職つけて、それ1本でやってます」的な潔いカッコよさに。
自分で自分を守るしかない個人事業主が、
こんな、先の見えないコロナ禍にあると余計に。
私も職人になりたかった。
手に職つけてたら強みになるのに。
・・・なんて、浅はかにも口走りそうになった。
●職人気質のアーティスト
水曜の夜、コーヒーを淹れて、おやつのどら焼きとともにいただきながら、
なんの気なしにリモコンのスイッチを押す。
紙芝居をめくるように、チャンネルをピコピコ変えていると、
若い女性が山口百恵さんの楽曲について語っていたので、気になって手を止めた。
それは、日テレの「今夜くらべてみました」というトークバラエティ番組で、
この日のテーマJ‐POPについて3人のゲストが語るという内容だった。
失礼ながら、山口百恵さんを敬愛するその若い女性が何者なのかわからなかったが、
単純に昭和の歌謡曲、特にアイドルソングが大好きな私には、興味深く楽しめた。
ゲストのひとり、社会学者の古市憲寿さんが、
同じくゲストでいらしていた広瀬香美さん、他に大黒摩季さん、小室哲哉さん、
浜崎あゆみさんなどの、特に歌について熱く語っていらっしゃった。
私自身も歌詞重視派で揚げ足取りという、共通点があるためか、
古市氏の独特な見解に頷いたり笑ったりしながら、昔の歌謡曲を懐かしんだ。
どのような話の流れだったかは、はっきりと覚えていないけれど、
古市氏が、アーティストは職人気質の方が長続きする、というようなことを述べ、
山下達郎さんや中島みゆきさんを例に挙げていた。
そこで、私はハッとした。
実体験をもとに詞を書くアーティストは、いつかネタが尽きる。
クライアントの要望に即した詩を、きちんと提供できる職人は強い。
そんな意味合いのことをに言っているように、聞こえたのだ。
●目指せ、ライター職人。
確かに、小説家にしろ漫画家にしろ詩人にしろ、
自分の経験や考えのみを作品にするとすれば、
テーマもアイデアもエピソードも、じきに枯渇するだろう。
このような散文を書く時に、敢えて実体験や独自の考えを盛り込む。
オリジナリティとリアリティを兼ね備えた文章になるからと考え、そうしている。
しかし、このままではいつか、ネタ切れになる。
そうだ、職人を目指そう!職人気質で文章を書こう!!
そう思い立って、キーボードを叩いても、結局自分のことを書いてしまうのだった。
職人への道のりは、長く険しいようだ。
雑貨屋コンロラン店主 タナカヨウコ
【記事を書いた人】
ライター:タナカヨウコ
北鎌倉「コンロラン」店主
旅行好きがこうじて北鎌倉に世界の雑貨を扱う雑貨屋オープン
ライター、イラスト、写真と何でもこなすマルチアーティスト
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