「語らぬ動画」
　
●彫るだけ動画　　
象好きの友人がいるので、彼女への誕生日プレゼントに、
象のはんこを彫っていただいたことがある。
　
大抵、自分の店の開店前に、オーダーだけさせていただいて、
「帰りに取りに寄りますね、支払いはその時でよい？」とかなんとか言いながら、
雨人さん自ら出来上がりを配達してくださる、というパターン。
　
だから、象さんが彫られる様を見るのは初めてだし、
「世界最速男」の30秒技を、検証したことすらなかった。
　
ギギギギーー、ギコギコ、くるり、ギィギィ、くるくる、ギギギ・・・。
　　
ふむふむ、
なんだか新鮮。
　
むむむ、
若干違和感。
　
ああそうか、雨人さんたら何も語っていない。
そして、アボカド坊やも出てこない。
　
軽快なBGM、石と印刀の奏でる音色、テロップの文字、そして、
(どこにカメラを置いているのかが気になる)映像で構成されている。
　
近ごろ、彫り語りを視聴することが多かったから、新鮮かつ違和感なのだろう。
でも、彫るだけ動画を見るのも悪くない。
　
こうして、動物を彫る映像を見ると、消しゴムはんこを彫りたくなってきたりする。
　
昭和25年から平成21年までの長きに渡り、小田原城動物園で親しまれてきた、
お婆さん象ウメ子を思い出したりする。
　
ああそうか、
石の音色と雨人さんの印刀さばき(？)が、耳に目に脳に心地よいのだな、きっと。
　
雑貨屋コンロラン店主　タナカヨウコ
　

タナカヨウコの篆刻探訪記
 【記事を書いた人】

ライター：タナカヨウコ
北鎌倉「コンロラン」店主
旅行好きがこうじて北鎌倉に世界の雑貨を扱う雑貨屋オープン
ライター、イラスト、写真と何でもこなすマルチアーティスト
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