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【陶印が気になる】 ~タナカヨウコの篆刻探訪記 #061~

 

 

 

【陶印が気になる】
 
●陶芸と私
石だけでなく様々な素材が名を連ねる印材の世界で、陶印が気になったのはなぜかと言えば、
ズバリ「どのタイミングで彫るのか」が想像できなかった、からである。
 
いつだったかどこだったかの博物館で、陶印らしきものを見たことは何度かある。
けれども、その製作過程についてなど、考えたことはなかった。
 
そう言えば、保育を専攻していた学生時代、「図工」の授業があったので、
私は熱望の果て、図工の教授のもとで、卒業研究をすることになった。
 
その教授が学内に窯を構えたこともあり、確か研究テーマは、
福祉施設における陶芸について、か何かだったと記憶している。
 
そんな環境にあったことから、私はほんの少しだけ陶芸をかじった経験があり、
灼熱汗だくの窯入れなんかも体験したことがある。
 
 
●いつ彫るか?
さて、本題の陶印に話を戻すと、
印材の形に成形した粘土の状態で彫るのは、柔らかすぎて現実的でない気がする。
 
しかも印として成り立つ形ができたその後に、乾燥させて水分を飛ばし、
更に高温で焼き上げるとなると、それぞれの工程で起きる収縮により、相違が大きくなりそうだ。

 
ヒビや変形も起こり得るから、印面が確実に平らな状態で焼きあがるとは考えにくい。
 
では、先に焼き上げた陶製の塊を印材として、彫るのはどうだろう。
 
粘土にもよると思うが、硬くて刃が立たなかったり、刃が入ってもヒビ割れたりしないだろうか。
専用の道具があったとしても、彫るにはそれなりの技術が求められることだろう。

 
 
●きりたんぽ
篆刻家の松尾さんによると、どうやら、上記2工程(粘土状態と焼き上がり後)の間、が正解らしい。
成形後に乾燥させた粘土を彫り、彫ったものに釉薬をかけて焼くという。
 
なるほど、その手があったか。
 
しかし、確実にある程度の収縮、火の入り方次第でヒビや変形もあるだろうから、
思う通りの仕上がりになるとは限らない、なかなか面白そうである。
 
プロともなれば、計算ずくで彫ると思われるが、想定外の美なんかもあったりすると思う。
粘土だけに、装飾なんかも割と施しやすそうで、陶印の世界はかなり奥が深そうだ。
 
なんて、好奇心と興味を抱きながら、学生時代の窯入れを思い返してみる。
 
ゼミ仲間に秋田県出身者がおり、ご実家から届いたきりたんぽを持って来た。
窯の熱を利用した鍋を囲み食した「きりたんぽ」しか思い出せないとは、無念でしかない。
 
雑貨屋コンロラン店主 タナカヨウコ
 

タナカヨウコの篆刻探訪記
 【記事を書いた人】


ライター:タナカヨウコ
北鎌倉「コンロラン」店主
旅行好きがこうじて北鎌倉に世界の雑貨を扱う雑貨屋オープン
ライター、イラスト、写真と何でもこなすマルチアーティスト
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